Illustration by Tuyoshi Egashira 
& Ritomo Tunashima

  プロ野球日本シリーズの勝者に贈られるペナントとチャンピオンフラッグが、毎年色が変わっているってコトに気がついたのは、つい数年前の話だ。
 実は恥ずかしながら、私、もともと優勝とはまったく縁のなかった横浜ベイスターズのファンだったので、優勝ペナントのコトなんか考えたコトもなかったというのがホントのところで、あの1998年のあとにはじめて気がついたというのが正直な話である。
1950年の第1回日本シリーズ(当時は日本ワールドシリーズ)で優勝した毎日オリオンズが獲得した優勝ペナント。

 ちなみにペナントというのは、刺繍が施された三角形の旗で、チャンピオンフラッグは、翌年のペナントレースで優勝チームが球団旗と共にスコアボードの上に掲げている三角の旗ですね。
 ベイスターズが日本一になったときのペナントは紫みたいな紺色で、チャンピオンフラッグは普通の紺色(実は紫だったらしいのだが)であった。
 ところが翌年、福岡ダイエーホークスが獲得したペナントとチャンピオンフラッグは両方ともに緑色だったのだ。
「なんで色が違うんだ」
 で、過去のペナントを手持ちの資料で調べてみると、ベイスターズの前に優勝したヤクルトスワローズは赤、そのさらに前のオリックスブルーウェーブはなんとピンクだったコトが判明した。
「毎年、色が変わるのか」
 ペナントにいくつかの色があるというコトについては、漠然と把握はしていたんですが、こんなに毎年、変えているとは思わなかった。
戦前から戦後2リーグ分裂前までの優勝旗は日本的な四角い旗。色も茶色で地味。
 で、さっそく調べてみるコトにした。
 まず、歴史的に見てみますと、現在のような優勝ペナントが登場したのは1950年の2リーグ分立のときから。戦前から戦後の1リーグ時代までは、四角い旗が優勝旗として使用されていたようだ。
 ま、いわゆる高校野球や都市対抗野球なんかと同じような旗ですね。しかし高校野球は真紅の優勝旗なんて言ってけっこう色が派手だけど、職業野球、プロ野球は茶色と極めて地味だった。
 これがセ・パ2リーグ分立によってはじまった日本ワールドシリーズ(最初、日本シリーズはこう呼ばれていた)の優勝旗から、一転、ド派手に変わる。このときセ・リーグの松竹ロビンスに勝って日本一を決めた毎日オリオンズが手にしたのは、真紅のペナントだった。
 しかし翌51年、色が変わる。
 日本一に輝いた讀賣ジャイアンツが手にしたのはシックな紫のペナントだったらしい。やはり赤では派手すぎると思ったのだろうか。
 ところがさらに翌52年になると、ペナントは橙色となって、また派手に戻っていた。
 なんだかよく分からない。
 そこでルールを調べてみるコトにした。
 日本プロフェッショナル野球協約に日本シリーズの規定がありまして、第二条に(象徴と記念品)という項目がある。そこに「日本シリーズの象徴はペナントとチャンピオンフラッグとし、毎年優勝ティームに贈与される。」と書いてある。
 ただペナントやチャンピオンフラッグについての規定はこれだけ。色については何も書かれていない。
 ココまできたら日本シリーズを管轄する日本野球機構コミッショナー事務局に直接聞いてみるしかないだろう。
「プロ野球の優勝には連覇があるので、ペナントとチャンピオンフラッグは毎年、色を変えるように昔からなっています。で、現在使用しているのは、紫、緑、コバルト(ブルー)、牡丹、赤の五色で、これを順番にローテーションで使っていますね。しかし昔は他にも色がありました」
 どうやらあのオリックスのピンクは牡丹って色だったようだ。
 で、歴代のペナント色のリストを見せてもらったのだが、五色のローテーションが確立されたのは85年あたりからで、それより以前は順番もなく、気まぐれのようにいろいろな色がバラバラに並んでいた。そして過去には現在使用されている五色の他に、橙、うぐいす、小豆なんて色もあったようだ。
2000年のローテーションはコバルト(ブルー)だった。

「そして左側のサイドカラーも、横浜ベイスターズが優勝した98年から、ローテーションでまわすコトになりました」
 ベイスターズが獲得したペナントは紫でサイドカラーは黄色だった。翌99年に福岡ダイエーホークスが獲得したペナントは緑で、サイドカラーはオレンジ色。そして2000年の読売ジャイアンツはコバルトに黄色のサイドカラー、2001年のヤクルトスワローズが牡丹に黄色のサイドカラー、。
 で、このあとどう続くのかといいますと、2002年が赤に紫のサイドカラー、2003年が紫に黄色のサイドカラー。つまりココで98年のベイスターズと同じカラーリングにローテーションが戻るワケだ。今後はこの順番で行くそうだ。
 今後、日本シリーズのたびにチェックしてみてください。
 ちなみに過去、1950年からのペナントの色のローテーションを次ページにまとめてあるので、それもご覧ください。
 さて、プロ野球の優勝は日本シリーズだけではない。セ・パそれぞれのリーグ優勝がある。こちらについても、いったいどうなっているのか調べてみた。
 で、まずルールですが、セントラル野球連盟選手権試合アグリーメントの「表彰」のところに、「選手権試合の優勝チームには、優勝トロフィ、同レプリカ、優勝ペナントを授与する」とある。
セ・リーグにも昔は上のような刺繍モノのペナントがあったが、現在はペナントはなくて、下のフラッグのみ。

 セ・リーグのチャンピオンフラッグなら見たコトがあるけど、ペナントもあったんですかね。しかしどんな形なんだろうと思ってリーグに聞いてみたところ、「あの球場で球団旗と一緒に掲げている旗ですよ」という返事がかえってきた。つまりチャンピオンフラッグをセ・リーグではペナントと言っているらしい。
 セ・リーグの場合は2リーグ分立直後の50年代の前半には刺繍のペナントがあったらしいのだが、現在は存在していないそうだ。右のCBLという文字がボールの上に描かれた(昔のセ・リーグのマーク)赤と白のペナントがそれですね。このペナントは、いつから廃止になったのかははっきりしていない。
 ただしそんなセ・リーグにも自慢がありまして、それは優勝決定のその日にチーム名入りのチャンピオンフラッグを渡せるというシステムだそうだ。
 実は以前、ボクもテレビで見たコトがあるんですが、チャンピオンフラッグは何枚かの生地のパーツで出来ておりまして、優勝を2チームが競っている場合は、チーム名が染め抜かれた部分のパーツを争っている2チーム分用意しておく。
 で、優勝が決まったら、そのチームの名前を染め抜いたパーツをダーッとミシンで縫い合わせて一丁あがり。
 そして優勝決定のその日に球場に届くというシステムになっていたのである。
パ・リーグのペナントは2000年が江戸紫、1999年がファイヤーレッド、98年がスカイブルーだった。このローテーションで行くと、今シーズンはスカイブルーか。
 一方パ・リーグですが、こちらのアグリーメントには「表彰の方法」というところに「チームの表彰は表彰状、トロフィ、ペナントの授与をもって行い、トロフィのレプリカとフラッグ(三旗)を付す」と書いてある。
 で、こちらもリーグに聞いてみたんですが、するとペナントが登場するようになったのは、2シーズン制から1シーズン制に移行した83年から。そんなに昔の話ではない。
 それじゃあ、その前は何を渡していたのかというと、刺繍を施した優勝旗みたいなモノとかプレートのようなモノを渡していたようだ。
 そして現在のフラッグは江戸紫、スカイブルー、ファイヤーレッドの三色がありまして、これをやはりローテーションで渡しているという話であった。
 一方、優勝フラッグはどうなのかと言いますと、こちらの登場は89年から。ペナントよりもさらにあとから登場している。
 この年、優勝したのは近鉄バファローズ。
 ところが日本シリーズではジャイアンツ相手に王手をかけたのに、例の加藤哲投手の「巨人はロッテよりも弱い」の一言でジャイアンツが奮起してしまい逆転されて涙を飲んだ、あのときですね。
 で、日本シリーズのチャンピオンフラッグを取り損なったバファローズから、「球場に掲げる旗がないのは寂しい」という声があがり、パ・リーグもフラッグを作るようになったという。
 しかしパ・リーグの場合は制作費をリーグが負担して、製作そのものは各球団に委ねられているため、統一デザインというモノはないそうだ。
 ペナントめざした真剣勝負に一喜一憂しているのに、その目標であるペナントについては知らないコトばかり。「プロ野球ファンならこのくらいは知っておかなくちゃ」というコトでまとめてみました。


この原稿は雑誌『ダカーポ』No.445、2000年10月18日号に掲載したものに加筆したものです。

過去の日本シリーズ優勝ペナントのカラー・ローテーションをご覧になりたい方は、
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