日本もアメリカも考えるコトは一緒。
二年目のジンクス―赤毛のサウスポー
ポール・R. ロスワイラー著 稲葉明雄訳
1979年 集英社



「日本もアメリカも考えるコトは同じなんだな」と思いながら読んだのを憶えている。
 プロ野球で女性が活躍するという物語である。「赤毛のサウスポー」の翻訳本が日本で発売されたのは1977年だった。
 当時、日本では水島新司さんの野球漫画「野球狂の詩」に登場する水原勇気が大人気。この本が出た年には、アイドルの木之内みどりが水原勇気に扮した映画も封切られていた。野村克也現東北楽天ゴールデンイーグルス監督も本人の役で出演。70年代にロマンポルノ路線を走っていたにっかつが、久々に製作した一般映画だった。
 78年にはフジテレビが「ニューヤンキース」という女子野球チームを結成する。どちらかというとルックス重視のチームで、あの広岡達朗氏の娘さんも参加していたが、最近の女子野球チームのような実力はなかったように思う。しかしこの70年代後半にあった、ちょっとうわついた女子野球ブームはそれなりに面白かった。
「赤毛のサウスポー」は元大リーグの投手を父にもつ18歳のサウスポーの女性投手、レッド・ウォーカーが、快速球とスクリューボールを武器に大リーグで活躍するという定番のストーリー。ナショナル・リーグ西地区の下位に低迷する弱小球団ポートランド・ビーバーズに突如現われた彼女は、かのジャッキー・ロビンソンのごとく立ちはだかる差別の壁を乗り越えて行く。相手チームの試合放棄、頑固なコミッショナーの偏見などが立ちはだかるが、彼女は試合で強打者達をなぎ倒し勝ち星をあげることで、次第に理解者を増やしていく。そしてチームも快進撃……。ま、そんなお話である。
「赤毛のサウスポー」は、版元が集英社というコトもあって、かなり熱心な広告宣伝が行なわれていた。角川書店の映画との連動など、当時は大掛かりな広告宣伝で本を売る出版社の戦略が盛んに行なわれるようになった時期だった。しかし少し斜に構えた大学生のボクには、宣伝にのせられて本を買うというのは格好悪いという意識があった。
 でも格好悪いけれど、前年にアメリカであちらの野球を見てきたというコトもあって、この本だけはどうしても読みたかった。そこであまり普段は行かない近所の小さな書店で、まるでエロ本を買うような気分で買ったのをよく憶えている。
 しかし読んでみると面白かった。分かりきった展開なのだが、野球好きにはたまらない小説だ。恥ずかしさを我慢して買った甲斐があったと思ったものだ。
 そして2年後の79年、続編が登場する。タイトルは「二年目のジンクス」。
 前作の日本での評判が高かったため、アメリカよりも先に日本で発売されている。翻訳作業があるはずなのに凄い話だ。
 で、さらに驚くのは、日本人女子選手が登場し、ワールド・シリーズで優勝したビバースと読売ジャイアンツの日米決戦が行なわれるというストーリー。おまけに日本人女子選手の名前が青山夕紀で、回転レシーブの特技を持つ遊撃手という設定だ。
 冷静に考えると、前作を日本で売りまくった集英社の意向が、ずいぶんと入っていたんだろうなぁというコトは想像できる。
 でも、そんな邪念をひとまず置いて読むと、やっぱり面白い。プロ野球ファンの願望を拾い集めて巧みに料理した、職人技の野球小説だと思う。
 ちなみに第二作の文庫本タイトルは「赤毛のサウスポー・パート2」となっている

綱島理友の古本野球史 第86回

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