アメリカ人から見たちょっと変わった日本プロ野球。

JAPANESE BASEBALL
A FAN'S GUIDE
Brian Maitland
1991年 Tuttle Publishing Co,Inc刊



 綱島プロ野球研究所のメールフォームからメールをしてくるのは日本人だけではない。ときどきアメリカから日本の野球に関する質問をもらったりすることもある。
 日本野球に興味を持つアメリカ人はけっこういるようだ。
「なぜ日本のベースボール・ユニフォームの胸マークは日本語ではなくて英語が使われているのか。台湾や韓国は自国語がついているのに」とか、彼らからはこちらが答えに窮する質問がきたりする。
 こういう外国の日本プロ野球のファンに対応するために、近頃は少しずつではあるけれど、ニックネームの由来や球団旗の変遷のページには英語の解説もつけてサイトの英語化にも着手している。
「ジャパニーズ・ベースボール・ア・ファンズ・ガイド」というこの本が出版されたのは1991年。版元は日本の会社だが、野茂英雄投手がトルネード旋風をメジャーリーグで巻き起こした95年以前から、日本野球に興味を持つアメリカ人の需要はあったようだ。
 ボクがこの本を入手したのは、出版されてすぐの頃だった。確か取材でグアムに行って、街の書店で手に入れた記憶がある。
 当時のボクは、映画や出版物などで外国人がトンチンカンな解釈した変な日本を面白がる連載コラムをある雑誌に書いていて、この本もその手のネタになるのではないかと思って手に入れたのだ。
 ところが読んでみると、版元が日本ということもあり、この本はそういうモノとは違っていた。おそらくアメリカ人であると思われる著者の日本のプロ野球に対する知識もたいへんなもので、こちらが教えられることも多かった。本の構成は歴史からスタートして、日本独特の野球用語や作戦、ファン、球場、記録、外国人選手、観戦ツアー、チケット&メディアと話が進んで行く。
 歴史に関しては、なぜ日本のプロ野球の球団は企業名を名のっているのかというところからスタートして、36年の日本職業野球連盟創設を説き起こし、各球団の系譜にまで言及している。
 しっかりと日本プロ野球の歴史をおさえているのである。
 最後のチケット&メディアの章なども日本の新聞の読み方から、チケットの取り方までいたれりつくせりで解説している。
 たとえば「中Chunichi Dragons、神Hanshin Tigers、広 Hiroshima Carp」という具合に漢字の略語まで解説してある。アメリカ人が日本の新聞の勝敗表を見ても、ある程度理解出来るようになっているのだ。
 活字の解説以外に写真ページもあり、そこにはアメリカ人にとって不思議な日本の野球場風景がピックアップされている。
 たとえば外野席に乱立する応援旗。確かにこれは日本独特の風景だ。
 89年の読売ジャイアンツ藤田監督の胴上げシーンの写真も出ている。優勝チームの胴上げも日本独特の風習だ。
 「ノー、雨が降っているワケではない」というキャプションが着いているのは、神宮球場ライト側外野席の写真。ヤクルトスワローズのファンがビニール傘を広げて東京音頭を歌っている風景が写っている。
 あと、意外だったのが、札幌丸山球場の芝生外野席の写真だ。
「外野の芝生席でピクニック気分を楽しむファン」というキャプションが入っているのだが、考えてみるとアメリカのメジャーリーグの球場に芝生席はない。アメリカ人の目には、芝生席も珍しい風景だったようだ。
 外国人のとらえるトンチンカンな日本野球を見つけるつもりで購入した本だったが、逆にアメリカ人から見た、ちょっと変わった日本野球を教えてもらう結果となってしまった。

綱島理友の古本野球史 第75回

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