メジャーリーグのユニフォーム物語。
BASEBALL UNIFORMS of the 20th CENTURY
Marc Okkonen著
1991年 Sterling Pub. Co 刊



「アメリカにメジャーリーグのユニフォームの歴史を調べた本がある」と聞いたのはずいぶん前だった。
 今から15年ほど前に、ある雑誌の取材で日本のプロ野球のユニフォームを調べるコトになって、野球体育博物館を訪れたら、資料として出てきたのは、そのユニフォームが使用されていた時代の野球雑誌の束であった。日本球界には歴代のユニフォームを調べた本がないと知ったのはこのときだ。
 日本で最もメジャーなスポーツであるプロ野球で、その顔とも言えるユニフォームの歴史をまとめた資料がないというのは、正直、意外だった。
「プロ野球ユニフォーム物語」という本を作ろうと思ったのはこれがきっかけだ。
 このときアメリカで最近、そういう本が出たという話を聞いた。
 しかし当時、野球体育博物館にも、アメリカの本はまだ届いていなかった。
 で、「BASEBALL UNIFORMS of the 20th CENTURY」という書名とMarc Okkonenという著者名を聞いて、自分で探すコトにした。
 まずは日本の洋書店に当たったのだが、「ちょっと前まであったんですが……」と、イエナ、嶋田洋書など当時の著名な洋書店すべてでそう言われた。
 そのあとはアメリカに仕事で行くたびに、書店めぐりをして探した。ニューヨーク、ロスアンゼルス、サンフランシスコと探し回った。しかしどこの書店にも在庫がなく、注文になると言われた。届くまでに一週間くらいかかるそうで、短期間しか滞在しない旅行者に入手は困難だった。
 しかし1997年にアメリカに行ったときは、サンディエゴの友人の家に世話になっていたので、注文になっても友人が受け取ってくれるという話になって、これでやっと手に入ると確信して書店に出かけた。
 ところが、いざ注文してみると、このときにはすでに、絶版になっていのである。
 どこまでも縁のない本なのか。
 結局、この本を手に入れるコトが出来ず、「プロ野球ユニフォーム物語」の週刊ベースボールでの連載がスタートした。
 しかしいざ連載がはじまってみると、日本のプロ野球のユニフォームというのは、メジャーリーグのユニフォームを参考にしているケースが多く、やはり原稿を書くための資料として、この本が必要になってきた。
 で、サンディエゴの友人に連絡して、古本店で探してもらうように頼んでみたのである。すると「サンディエゴで探すのは難しいからネットで探してみよう」という話になった。その結果、「ニューヨークに二冊、ロサンゼルスに二冊、オレゴンで一冊、見つかった」という返事が返ってきたのである。このときはネット社会の凄さをまざまざと実感した。
 何年もかけてあれだけ探した本が簡単に見つかってしまう。
 結局、ニューヨークから取り寄せたのだが、届いた本のページを開いて、「ああ、こういうやり方があったか」と愕然とした。
 この本は、線画で描かれたバットを担いだ選手の絵でユニフォームの形を紹介していた。私のはじめていた連載は、ユニフォームを単体で正面、後、パンツを横から描いている。この本のやり方でやれば、背番号の形などは調べる必要はないし、袖章などもだいたいの形が分かればすむ。製作サイドから見ると、非常に合理的に出来ていたのである。
「どうもわれわれはマニアックにやりすぎちゃったみたいだね」
 この本を「プロ野球ユニフォーム物語」のイラストを描いてもらっている綿谷寛画伯に見せたら、こんな素直な感想が返ってきた。
 しかし連載をはじめる前にこの本を見なくて良かったのかもしれないと今は思う。見たら絶対に影響を受けたと思うし、まったく同じスタイルの本になっていた可能性もある。まったく目を通さなかったせいで、われわれの「プロ野球ユニフォーム物語」は、違うスタイルの本にすることが出来た。
 わざと野球の神様がこの本を見せてくれなかったのかもしれない。今はそんな気もしたりしている。

綱島理友の古本野球史 第50回

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